目次
「業務改善助成金」セミナー概要
<セミナータイトル>
育成人材の採用にぴったり!キャリアアップ助成金活用セミナー
<セミナー内容>
1. キャリアアップ助成金とは?
1-1.雇用助成金の概要
1-2.正社員化コースとは?受給の要件、金額、流れ
2. 活用のポイント、注意点
3. よくある失敗例
4. まとめ
<日時>
2023年7月5日(水)14:00~15:00
登壇者プロフィール
特定社会保険労務士 井上真理子 講師
アイビー社会保険労務士事務所 代表
■略歴
平成22年 社会保険労務士合格
平成27年 社会保険労務士登録
平成29年 特定社会保険労務士付記登録
令和2年~ 武蔵野市・三鷹市 市民相談員
(年金・社会保険・労務相談)
令和3年~ 東京都社会保険労務士会 電子化推進委員
■今回の講師「井上真理子」講師について
大学生の頃に社労士について勉強を開始。試験合格後、一般企業の人事に就職するも、法律論と現場のギャップを強く実感。
この経験から、制度と社会の橋渡しを行いたいと感じ、本格的に社労士の道を歩み始め、現在に至る。
労務管理、人事コンサルティングなどの一般的な社労士業務に取り組む傍ら、制度を活用することが「社会貢献につながる」と考え、助成金を活用する活動にも力を注ぐ。
Section1 キャリアアップ助成金とは?
1.1 キャリアアップ助成金の概要
「キャリアアップ助成金」は「雇用関係助成金」の中の一つ
「キャリアアップ助成金」は、「雇用関係助成金」の中の一つです。
「雇用関係助成金」は、みなさんが納付した雇用保険料を財源として、雇用の安定などに取り組む事業主に支給するものです。
「雇用関係助成金」の支給要件は毎年変わっています。
社会が望む政策には加算が付いたり、要件が緩和されたりします。
逆に、必要性がないとみなされた場合は、助成額が下がったり、助成金自体が廃止になったりすることもあります。
毎年4月1日にリニューアルしますが、年度途中でも補正予算が組まれて、途中でリニューアルすることもたまにあります。
今日お話する「キャリアアップ助成金」以外にも、「雇用関係助成金」にはたくさんの助成金があります。
たとえば、「雇用調整助成金」は、コロナ禍で多くの会社に活用されました。
「雇用関係助成金」の支給要件
・雇用の安定
・職場環境の改善
・仕事と家庭の両立支援
・従業員の能力向上 等
本日のテーマの「キャリアアップ助成金」は、いわゆる非正規労働者と呼ばれる方の雇用環境の整備を図るためのものです。
1-2.キャリアアップ助成金の全体像
「キャリアアップ助成金」の中には6つのコースがあり、大きく「正社員化の取り組み」と「処遇改善の取り組み」に分けられます。
「正社員化の取り組み」である「正社員化コース」の要件は、有期雇用労働者等を正社員化したときに助成が受けられるものです。
「正社員化コース」の条件
非正規のときと正社員になった後で、給与が3%以上増額していることが必要となります。
正社員に転換した後は、それに見合った待遇、給与に変更します。
「非正規の方に正社員になれるようなスキルを身に付けてもらってから正社員にステップアップさせる」という流れです。
※「正社員化コース」以外のコースについては下記、厚生省のホームページをご覧ください。
1-3. 正社員化コースの概要
「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」は、非正規労働者の企業内での計画的なキャリアアップを後押しする助成金です。
今回のセミナーでは「非正規労働者」という用語が何回か出てきますが、「非正規労働者」という用語は法律上の用語ではなく、実は明確な定義がありません。
たとえばパート、アルバイト、契約社員などの正社員以外の方をイメージしてください。
「正社員化コース」の主な要件は4つ!
要件① キャリアアップ計画を立てる
要件② 非正規労働者を6か月以上雇用
要件③ 正社員転換制度で正社員化する
要件④ 正社員化で賃金3%アップ
「正社員化コース」は、「支給申請→決定→支給」の流れになります。
「非正規労働者の方にスキルアップしてもらい、自社でコア人材として活躍してもらいたい」という事業者さまは、ぜひ「正社員化コース」の活用をおすすめします。
それでは、これら4つの要件受給のポイントを解説していきます。
1-4. 要件①キャリアアップ計画を立てる
事業主や管理職がキャリアアップ管理者に望ましい
キャリアアップに必要な知識および経験を有する人の中から、キャリアアップ管理者を選任します。
キャリアアップ管理者は、会社側に立って非正規労働者の方のキャリアアップに取り組む方なので、事業主や管理職などが望ましいです。
キャリアアップ管理者に該当しないパターン
- 社外の方
- 正社員化する予定の非正規の方
おおまかな取り組みイメージを計画書に書く!
キャリアアップ管理者を選任後は、キャリアアップ計画を策定します。
「いつ頃、どのような人を対象に、どのような取り組みを行うか」を計画書にまとめて労働局に提出します。
この計画書にある「取り組み期間」は、最大5年と設定できます。
また、計画書に書いた取り組みができなかった場合でもペナルティは特にありませんが、計画書に不備があると受給できない可能性があります。
「対象者」「目標」「目標を達成するために講じる措置」について、おおまかに「大体の取り組みイメージ」を記載します。
例えば、「AさんとBさんに対して……」などのように細かく記載する必要はありません。
ちなみに、「キャリアアップ助成金」の「正社員化コース」以外のコースに申請するときも同じ計画書を使います。
1-5. 要件②非正規労働者を6か月以上雇用
同一労働同一賃金の反する待遇差に注意!
正社員化の前6ヶ月+後6ヶ月で最短でも1年間雇用する必要があります。
また、「正規雇用労働者には賞与があるけど、非正規労働者にはない」等、正規雇用労働者(いわゆる正社員)と賃金の計算方法などで待遇差があることが必要です。
「非正規の方には通勤手当がないが、正社員にはある」等の「正社員とそれ以外の方の間の不合理な待遇差は禁止する」というルールがあります。(いわゆる、「同一労働同一賃金」)
このルールに反する待遇差は、是正を求められる可能性があるので、事業主さまは自社の待遇差がこのルールに反するか否かを意識してください。
就業規則を作り、待遇差を明記する
「正社員とそれ以外の方では昇給幅が異なる」という場合も待遇差があると認められます。ただし、「非正規は30円から50円まで、正規は50円から100円の間で昇給する」など、就業規則で具体的な内容を確認できる必要があります。
待遇差に関しては、就業規則等で明確に定める必要があります。
就業規則がない場合は作成して6ヶ月間以上、非正規の方に就業規則のルールを適用させます。
非正規のみの会社でも就業規則を作れば申請できる!
正社員用と非正規用の2つの就業規則があり、その就業規則で待遇差が確認できれば、実際に正社員が在籍していなくても、正社員と待遇差があるとの要件を満たすことができます。
そのため、この助成金の申請を検討していて正社員がゼロの会社は、今から正社員用・非正規用の2つの就業規則を作っておきましょう。
1-6.要件③正社員転換制度で正社員化する
正社員転換の制度どおりに非正規社員を正社員化することがマスト!
まず正社員転換の制度がない場合は制度を作る必要があります。
この3項目をもとに制度を作って就業規則に盛り込みます。
- 面接試験や筆記試験等の手続き
- 要件(勤続〇か月以上、人事評価〇以上、所属長の推薦等、客観的に確認可能な要件・基準)
- 転換時期(毎月1日等)
非正規の方が上記で決めたルールに則って正社員に転換するための試験に合格した場合、決められた転換時期に正社員化します。
不支給になるパターン
就業規則に記載した正社員転換の制度 | 就業規則に記載した正社員転換の制度 | 実際 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
面接試験や筆記試験等の手続き | 筆記試験を実施 | 筆記試験を実施しなかった | ||||||
勤続年数等の要件 | 勤続1年以上で転換 | 勤続6ヶ月で転換した | ||||||
転換時期 | 毎月1日付で転換 | 5日付で転換した |
1-7.要件④正社員化で賃金3%アップ
たとえば、正社員に転換後に非正規の頃から5%給料が上昇していれば、「正社員化で賃金3%アップ」の条件に該当します。
時間給➡月給 時間単位に変換して計算
転換前が時給、転換後が月給の場合は、1時間あたりのそれぞれ1時間当たりの時間単価に変換し比較します。
「処遇の改善に直接関係がないもの」は算定外
以下のものは賃金の算定に含めません。
理由はこれらによって給料が上がったとしても、処遇が改善されたとは判断できないからです。
例えば、引っ越しにより通勤手当が増え給料が増えても「待遇が良くなった」とは言えません。
1-8.受給額
「正社員化コース」の受給額は、中小企業の方が大きい
中小企業で有期雇用(いわゆる契約社員)からの転換の場合、対象者1人当たり57万円。
無期雇用からの転換は、その半額の28万5000円です。
大企業の場合は中小企業よりも金額が下がりますが受給はできます。
場合によっては加算がある
1年度の申請上限は20人まで。57万円×20人で最大1,140万円が受給できます。
これは他の助成金と比べると高額です。
この57万円は基本の金額です。
また、「人材開発支援助成金」という教育訓練のための助成金あります。
この助成金は、訓練修了後に正社員化すると基本額が加算されます。
「正社員化コース」の趣旨に反すると不支給になることも
助成金は、申請すれば100%受給できるわけではなく、その助成金の趣旨に反する場合は不支給になります。
「正社員化コース」の趣旨は、「非正規労働者をスキルアップさせて、コア人材にすること」です。
1-9.流れ
計画書の取り組み期間は最大5年
キャリアアップ計画書の提出から支給決定までの流れです。
まず正社員化の前日までにキャリアアップ計画書を提出し、労働局の認定を受けます。
たとえば、4月1日付けで正社員化する場合は、遅くとも3月31日までに労働局の認定を受ける必要があります。
計画書の取り組み期間は3年から5年に設定できます。
「対象者」「試験の内容」「転換時期」を示した正社員転換の制度を作る
認定を受けて正社員転換の制度がない場合は、必ず「対象者」「試験の内容」「転換時期」を盛り込んだ制度を作ります。
すでに転換規定がある場合もこの3つが入っているか確認してください。
これらが全て盛り込まれていないと不支給になります。
「賃金3%以上アップ」のタイミングに注意!
正社員に転換後に、転換前より賃金が3%以上アップする必要があります。
正社員転換後、給与を3ヶ月分ほど支給したタイミングで、このまま順調にいけば3%以上アップの要件をクリアできそうか試算してください。
【NG例】
正社員に転換した後、6ヶ月分の給与を全部払った後に、2%しか上がってなかったので不足分を後から追加支給した。
Section2 活用のポイント、注意点
2-1.活用のポイント
「正社員化コース」の活用のポイント
制度の趣旨を正確に理解し、支給要件を満たすことが大事です。
次の3ステップで取り組みを進めていきます。
2-2.制度を適切に活用できなかった事例
非正規の求人を出すときは、求職者にとって魅力ある「+α」を!
既にスキルを持っている人が非正規の求人に応募することはあまり考えられません。
非正規の求人であっても、テレワークやフレックス等、柔軟な働き方できる魅力的なポイントがあると求人が来やすくなります。
求人を出す際には「働きやすい環境があるか」「柔軟な環境があるか」という点に気を付けてみてください。
不正受給になるパターン
- 正社員で求人を出す
- 「いずれ正社員に転換する」と求職者と約束をして雇い入れる
転換後6か月経過する前に退職すると受給不可
賃金3%アップ等、他の「正社員化コース」の支給要件を満たしていても、6か月を経つ前に退職すると申請不可です。
「少なくともあと1年ぐらい勤務してもらえそうか否か」を、転換試験の面接の際等に見極めましょう。
2-3.育成人材の採用のポイント(おまけ)
2-4.ターゲット人材で助成金を使い分ける
採用したい人材のタイプによって助成金を選ぼう!
採用する人材によって使える助成金が異なります。
例えば、今日ご紹介した「正社員化コース」はこれからスキルアップをしてもらいたいスキル・経験の浅い人、つまり「人材育成が目的の助成金」です。
【人材育成に関する助成金】
【即戦力人材に関する助成金】
Section3よくある失敗例
申請失敗を防ぐポイント
- 「正社員化コース」の制度の趣旨に反していると申請できないので、もし制度から外れそうな状況になったら、早めに労働局や専門家に相談する
- スケジュール管理に余裕を持たせる
- 必ず支給要件を満たしているかチェックする
まとめ
- キャリアアップ助成金正社員化コースは、非正規労働者の企業内での計画的なキャリアアップを後押しする助成金
- 非正規労働者にスキルアップさせコア人材にしたいときに活用する
- 1人あたり最大57万円、教育訓練併用で加算あり
- 「非正規労働者がスキルアップ→正社員にステップアップ→賃金アップ」の3アップの流れに沿って取り組みを行う
- 採用や正社員化を焦りすぎない、取組に合った助成金を活用する
- 時は戻せない!要件を満たしているか随時確認しながら進める
リアリゼイションが選ばれる6つの理由
リアリゼイションのサポートが選ばれるのには、「理由」があります。
1.数々の補助金審査委員経験のある中小企業診断士が監修
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