短時間労働者の週所定労働時間を延長すると受給できる助成金があるのをご存知でしょうか?
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」は、このような措置を行った事業主に対して最大28万4,000円(労働者1人あたり)を支給する制度です。
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目次
「キャリアアップ助成金」とは
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」とは
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」は、短時間労働者の週所定労働時間を延長し、処遇の改善を図り、あらたに社会保険の被保険者とした場合に助成される制度です。
短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、あらたに社会保険に適用した場合、1人あたり最大28万4,000円の助成金が支給されます。(生産性の向上が認められる場合)
5時間未満の延長の場合は、延長後の基本給が延長前と比べて一定の割合昇給していること等が支給の条件になります。
くわしくは、「キャリアアップ助成金のご案内」62ページをご参照ください。
「キャリアアップ助成金」の支援対象となる事業主の条件
以下、(1)~(5)はキャリアアップ助成金の全コースに共通する事業主の条件です。
- (1) 雇用保険適用事業所の事業主であること
- (2) 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
- (3) 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であって、以下の(A)に該当しない事業主であること
- (A) 「キャリアアップ計画書」の内容(実施するコース)に講じる措置として記載していないにもかかわらず、取組実施日の前日までに「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出していない事業主であること
- (4) 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況および賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること
- (5) キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること
キャリアアップ管理者:
「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」に規定する「キャリアアップ管理者」をいい、有期雇用労働者などのキャリアアップに取り組む者として必要な知識および経験を有していると認められる者を指します。
キャリアアップ計画:
有期雇用労働者などのキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するものです。
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」の支援対象となる事業主の条件
以下(1)~(5)全てに該当する事業主が「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」の支援対象になります。
「生産性の向上」に関する条件については、「キャリアアップ助成金のご案内」9ページをご覧ください。
- (1) 雇用する有期雇用労働者などについて、週所定労働時間を5時間以上延長、または週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長するとともに基本給の増額を図った事業主であること
- (2) 上記(1)により週所定労働時間を延長し、あらたに社会保険の被保険者となった労働者を、延長後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して延長後の処遇適用後6か月分の賃金を支給した事業主であること
- (3) あらたに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者などについて、基本給および定額で支給されている諸手当を新たに社会保険の被保険者となる前と比べて減額していない事業主であること
- (4) 上記(1)により週所定労働時間を延長した日以降の全ての期間について、当該労働者を雇用保険および社会保険の被保険者として適用させている事業主であること
- (5) 上記(1)により週所定労働時間を延長した際に、週所定労働時間および社会保険加入状況を明確にした雇用契約書などを作成および交付している事業主であること
また、生産性要件を満たした場合の支給額の適用を受ける場合は、当該生産性要件を満たした事業主であることが条件になります。
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」の対象となる労働者の条件
次の(1)、(2)が「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」の対象になる労働者の主な条件です。
- (1) 週所定労働時間を延長した後、6か月以上の期間継続して支給対象事業主に雇用される有期雇用労働者などであること
- (2) 週所定労働時間を5時間以上延長した日の前日から起算して過去6か月以上の期間継続して、有期雇用労働者などとして雇用された者
週所定労働時間の延長が5時間未満の場合は、(1)に加え基本給を一定以上増額していることが必要です。
くわしくは「キャリアアップ助成金のご案内」62ページをご覧ください。
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」の助成額
「キャリアアップ助成金 短時間労働者等労働時間延長コース」は、1事業所あたりに支給される金額が決まっています。
また、支給額は、生産性の向上が認められる場合や企業の規模によって変わるのでご注意ください。
以下の表の< >は、生産性の向上が認められる場合の額です。
(1) 短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し新たに社会保険に適用した場合
1人あたりの支給額 | 大企業の場合の1人あたりの支給額 |
---|---|
22万5,000円<28万4,000円> | 16万9,000円<21万3,000円> |
(2) 労働者の手取り収入が減少しないように週所定労働時間を延長するとともに基本給を昇給し、あらたに社会保険に適用させた場合
延長した週所定労働時間 | 1人あたりの支給額 | 大企業の場合の1人あたりの支給額 |
---|---|---|
1時間以上2時間未満 | 4万5,000円 <5万7,000円> | 3万4,000円 <4万3,000円> |
2時間以上3時間未満 | 9万円<11万4,000円> | 6万8,000円 <8万6,000円> |
3時間以上4時間未満 | 13万5,000円 <17万円> | 10万1,000円<12万8,000円> |
4時間以上5時間未満 | 18万円<22万7,000円> | 13万5,000円 <17万円> |
延長時間数に応じて以下のとおり延長時に基本給を昇給することで、手取り収入が減少していないと判断します。
延長した週所定労働時間 | 昇給 |
---|---|
1時間以上2時間未満 | 13%以上 |
2時間以上3時間未満 | 8%以上 |
3時間以上4時間未満 | 3%以上 |
4時間以上5時間未満 | 2%以上 |
生産性要件の有無にかかわらず、支給申請上限は45人です。(令和4年9月30日まで)
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の申請のスケジュール
(1) キャリアアップ計画の作成・提出
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
(2) 週所定労働時間延長を実施
週所定労働時間を延長した際に、週所定労働時間および社会保険加入状況を明確にした「労働条件通知書」または「雇用契約書」を交付してください。
(3) 延長後6か月分の賃金を支給・支給申請
短時間労働者の週所定労働時間延長後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
(4) 審査、支給決定
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の申請に必要な書類
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」には、支給申請書(様式第3号、別添様式7)が必要です。
支給申請書には「支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)」等、数種類の書類を添付します。
くわしい添付書類については「キャリアアップ助成金のご案内」の63ページでご確認ください。
様式第3号と別添様式7の記入例は、「キャリアアップ助成金のご案内」67ページと76ページをご参照ください。
まとめ
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、支援対象となる短時間労働者の週所定労働時間を延長した場合に助成金を受給できる制度です。
受給の具体的な条件は「週所定労働時間を5時間以上延長した場合」または「週所定労働時間を1時間以上5時間未満延長するとともに、手取り収入が減少しないように賃金に関する処遇の改善を図った場合」です。
週所定労働時間延長は経済的な安定につながり、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進させます。
事業主のみなさまは、ぜひ「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の活用をご検討ください。
出典:厚生労働省