職場の福利厚生や補助金等で「社会保険」という言葉がよく使われますよね。
健康保険に加入してれば、安心して仕事に取り組めるメリットがあります。
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、アルバイト等の有期雇用労働者等社会保険に加入させることを目的とした制度です。
他のキャリアアップ助成金については、「「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」とは?必要書類や記入例を解説!」をご覧ください。
目次
「キャリアアップ助成金」とは
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」とは
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」とは、社会保険の適用拡大の措置を実施する事業主を支援する目的で設けられた助成金です。
次のような場合に助成金が支給されます。
事業主は労使合意に基づく社会保険の適用拡大の措置の導入に伴い、雇用する有期雇用労働者等の働き方の意向を適切に把握し、社会保険の適用と働き方の見直しに反映させるための取組を実施し、当該措置により新たに社会保険の被保険者とする。
「有期雇用労働者等の働き方の意向を適切に把握する」とは、「雇用する有期雇用労働者等に対して社会保険の制度概要や加入メリット等の説明・相談等を行うとともに、保険加入に関する意向確認等を行う」といったことを指します。
1事業所当たり最大24万円の助成金が支払われます。(生産性の向上が認められる場合)
有期雇用労働者:
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことを有期雇用労働者と言います。
たとえば、「パートタイマー」「アルバイト」等、呼び方は異なっても、この条件に当てはまれば有期雇用労働者です。
「キャリアアップ助成金」の支援対象となる事業主の条件
以下、(1)~(5)はキャリアアップ助成金の全コースに共通する事業主の条件です。
- (1) 雇用保険適用事業所の事業主であること
- (2) 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
- (3) 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であって、以下の(A)に該当しない事業主であること
- (A) 「キャリアアップ計画書」の内容(実施するコース)に講じる措置として記載していないにもかかわらず、取組実施日の前日までに「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出していない事業主であること
- (4) 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること
- (5) キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること
キャリアアップ管理者:
「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」に規定する「キャリアアップ管理者」をいい、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として必要な知識および経験を有していると認められる者を指します。
キャリアアップ計画:
有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するものです。
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の支援対象となる事業主の条件
以下(1)~(7)全てに該当する事業主が「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の支援対象になります。
「生産性の向上」に関する条件は、「キャリアアップ助成金のご案内」56ページをご覧ください。
- (1) 労使合意にもとづき社会保険の適用拡大の措置を実施した事業主であること
- (2)措置該当日の前日までに、以下の(A)および(B)の取組を実施した事業主であること
- (A) 支給対象事業主に雇用される社会保険の被保険者ではない全ての有期雇用労働者等(以下「未加入有期雇用労働者等」)に対する社会保険制度の概要および加入メリット等に関する説明会の開催
- (B) 未加入有期雇用労働者等に対する社会保険への加入に関するアンケート調査等の実施
- (3)労使合意にもとづき社会保険の適用拡大の措置を実施した旨を事業所内の全ての有期雇用労働者等(社会保険の被保険者ではない者を含む)に対して周知した事業主であること
- (4)(1)の措置の適用により、新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等を措置適用後6か月以上の期間継続して雇用し、当該労働者に対して措置該当日後6か月分(勤務をした日数が11日未満の月は除く)の賃金を支給し、基本給および定額で支給されている諸手当を新たに社会保険の被保険者となる前と比べて減額していない事業主であること
- (5)措置該当日以降の全ての期間について、(1)により新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等を雇用保険および社会保険の被保険者として適用させている事業主であること
- (6)(1)の実施後に、社会保険加入状況および基本給を明確にした雇用契約書等を作成および交付している事業主であること
- (7)措置該当日以降に新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定の割合以上増額し、助成額の加算の適用を受ける場合にあっては、次の(A)、(B)のいずれにも該当する事業主であること
- (A) 措置該当日以降、新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等について、新たに社会保険の被保険者となった日から起算して1か月前の日から1か月を経過するまでの間(同日も可)において、当該有期雇用労働者等の基本給を一定の割合(2%以上)で増額し、かつ、当該有期雇用労働者等について、(1)の措置を講ずる前および基本給の増額前と比べて、定額で支給されている諸手当を減額していない事業主であること
- (B) 有期雇用労働者等を基本給の増額後6か月以上の期間継続して雇用し、当該有期雇用労働者に対して基本給の増額後6か月分(勤務をした日数が11日未満の月は除く)の賃金を支給した事業主であること
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の対象となる労働者の条件
次の(1)~(5)までの全てに該当する労働者が「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の対象になります。
- (1) 支給対象事業主に雇用される有期雇用労働者等であること
- (2) 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した日(以下「措置該当日」)の前日から起算して過去3か月以上の期間継続して有期雇用労働者等として雇用されていた者であること
- (3) 措置該当日の前日から起算して過去3か月間、社会保険の適用要件を満たしていなかった者であって、かつ支給対象事業主の事業所において過去2年以内に社会保険に加入していなかった者であること
- (4) 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
- (5)支給申請日において離職していない者であること
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の助成額
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」は、1事業所あたりに支給される金額が決まっています。
また、支給額は、生産性の向上が認められる場合や企業の規模によって変わるのでご注意ください。
1事業所当たり 19万円<24万円>(14万2,500円<18万円>)
< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額
措置該当日以降に新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定の割合以上増額した場合、基本給の増額割合に応じて以下の助成額が加算されます。
加算額:
基本給の増額割合 | 1人当たりの加算額 |
---|---|
2%以上3%未満 | 19,000円 <24,000円>(14,000円<18,000円>) |
3%以上5%未満 | 29,000円 <36,000円>(22,000円<27,000円>) |
5%以上7%未満 | 47,000円 <60,000円>(36,000円<45,000円>) |
7%以上10%未満 | 66,000円 <83,000円>(50,000円<63,000円>) |
14%以上 | 13万2,000円<16万6,000円>(99,000円<12万5,000円>) |
<支給申請上限人数は45人まで>
措置該当日以降に有期雇用労働者等の生産性の向上を図るための取組(研修制度や評価の仕組みの導入)を行った場合に助成額を加算します。
1事業所当たり100,000円(75,000円)
令和4年9月30日まで(従業員数が100人を超える事業主については、措置該当日以降に新たに社会保険の被保険者となった有期雇用労働者等の基本給を一定の割合以上増額した場合、基本給の増額割合に応じた助成額の加算措置を除き令和3年9月30日まで)の時限措置となります。
※「研修制度や評価の仕組みの導入」については、下記リンクの56ページをご参照ください。
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の申請のスケジュール
(1) キャリアアップ計画の作成・提出(措置該当日の前日までに提出)
雇用保険適用事業所ごとに「キャリアアップ管理者」を配置するとともに、労働組合等の意見を聴いて「キャリアアップ計画」を作成し、管轄労働局長の認定を受けます。
(2) (3)の措置を実施する前日までに未加入有期雇用労働者等に対する説明会およびアンケート調査等の実施
(3) 労使合意に基づき社会保険の適用拡大の措置を実施
措置実施後に、社会保険加入状況および基本給を明確にした「労働条件通知書」または「雇用契約書」を交付してください。
(4) 措置該当日後の基本給に基づき6か月分の賃金を支給・支給申請
措置該当日以降6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に支給申請してください。
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の必要書類
「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の申請には、支給申請書(様式第3号、別添様式6)が必要です。
支給申請書には「支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)」等、数種類の書類を添付します。
また、助成額の加算の適用を受ける場合は、追加の添付書類が必要になります。
様式第3号と別添様式6の記入例は、「キャリアアップ助成金のご案内」67ページと74ページをご参照ください。
まとめ
今回は、一定の条件のもと有期雇用労働者等を新たに社会保険の被保険者とした場合に助成金が支給される「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」をご紹介しました。
有期雇用労働者等の経済的安定を図るため、「キャリアアップ助成金 選択的適用拡大導入時処遇改善コース」の活用を検討してみませんか。
出典:厚生労働省