「正社員は人間ドックを受けられるのにアルバイトは受けられない……」
同じように働いていても、正規雇用労働者と有期雇用労働者等では処遇の格差がありますよね。
「キャリアアップ助成金 諸手当制度等共通化コース」は、有期雇用労働者等にも正規雇用労働者と同じ諸手当制度を設け、実施することを目的とした制度です。
たとえば、「法定外の健康診断制度」を新たに設け、有期雇用労働者等4人以上に実施した場合、1事業所あたり38万円が支給されます。
「処遇の平等」は、労働者のモチベーションアップにつながり、職場を活性化させます。
処遇改善に取り組む事業主さまはぜひ「キャリアアップ助成金 諸手当制度等共通化コース」をご活用ください。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の記事はこちらから!
目次
「キャリアアップ助成金」とは
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」とは
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」は、有期雇用労働者等に関して正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用または有期雇用労働者等を対象とする「法定外の健康診断制度」を新たに設け、延べ4人以上実施した場合に助成される制度です。
有期雇用労働者:
事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者のことを有期雇用労働者と言います。
たとえば、「パートタイマー」「アルバイト」等、呼び方は異なっても、この条件に当てはまれば有期雇用労働者です。
「キャリアアップ助成金」の支援対象となる事業主の条件
- (1) 雇用保険適用事業所の事業主であること
- (2) 雇用保険適用事業所ごとに、キャリアアップ管理者を置いている事業主であること
- (3) 雇用保険適用事業所ごとに、対象労働者に対し、キャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主であって、以下の(A)に該当しない事業主であること
- (A) 「キャリアアップ計画書」の内容(実施するコース)に講じる措置として記載していないにもかかわらず、取組実施日の前日までに「キャリアアップ計画書(変更届)」を提出していない事業主であること
- (4) 該当するコースの措置に係る対象労働者に対する労働条件、勤務状況及び賃金の支払い状況等を明らかにする書類を整備し、賃金の算出方法を明らかにすることができる事業主であること
- (5) キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主であること
キャリアアップ管理者:
「有期雇用労働者等のキャリアアップに関するガイドライン~キャリアアップ促進のための助成措置の円滑な活用に向けて~」に規定する「キャリアアップ管理者」をいい、有期雇用労働者等のキャリアアップに取り組む者として必要な知識および経験を有していると認められる者を指します。
キャリアアップ計画:
有期雇用労働者等のキャリアアップに向けた取り組みを計画的に進めるため、今後のおおまかな取り組みイメージ(対象者、目標、期間、目標を達成するために事業主が行う取り組み)をあらかじめ記載するものです。
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の支援対象となる事業主の条件
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の支援を受けるには、上記の「「キャリアアップ助成金」の支援対象となる事業主の条件」に加え、次の(1)、(2)両方に該当している必要があります。
詳細は下記の「キャリアアップ助成金のご案内」45ページをご覧ください。
(1) 労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の諸手当制度を新たに設け、適用する場合、定められた10つの項目(※)を全て満たしていること
※「労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等に関して、正規雇用労働者と共通の賞与、家族手当等のいずれかの諸手当制度等を新たに設けた事業主であること」等があります。
(2) 労働協約または就業規則の定めるところにより、その雇用する有期雇用労働者等のうち、事業主に実施が義務付けられていない有期雇用労働者等に雇入時健康診断もしくは定期健康診断を実施する制度またはその雇用する有期雇用労働者等に人間ドックを実施する制度を新たに設け、延べ4人以上実施する場合、定められた8つの項目(※)の全てを満たしていること
※「支給申請日において当該健康診断制度を継続して運用している事業主であること」等があります。
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の対象となる労働者
次の(1)~(4)全てに該当する労働者が「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の対象になります。
詳細は下記の「キャリアアップ助成金のご案内」44ページをご覧ください。
- (1) (イ) 、(ロ)のいずれかの期間(共通化後または受診後について勤務をした日が11日未満の月を除く)継続して、支給対象事業主に雇用されている有期雇用労働者等であること(ただし、複数手当を導入し、手当が先に支給され、その支給後6か月以内に健康診断制度を延べ4人以上に実施した場合であって、健康診断制度のみを受診した者は除く)
- (イ)労働協約または就業規則の定めるところにより、諸手当制度を共通化した日の前日から起算して3か月以上前の日から共通化後6か月以上または定期健康診断もしくは人間ドックを受診した日の前日から起算して3か月以上前の日から受診後6か月以上の期間
- (ロ)雇入時健康診断を受診した日から6か月以上の期間
- (2) 諸手当制度を共通化し、初回の諸手当を支給した日以降または健康診断制度を導入し、雇入時健康診断もしくは定期健康診断または人間ドックを受診した日以降の6か月間(ただし、複数手当を導入し、手当が先に支給され、その支給後6か月以内に健康診断制度を延べ4人以上に実施した場合であって、健康診断制度のみを受診した者については受診した日)、当該対象適用事業所において雇用保険被保険者であること
- (3) 諸手当制度を新たに設け適用したまたは健康診断制度を新たに設け実施した事業所の事業主または取締役の3親等以内の親族以外の者であること
- (4) 支給申請日において離職していない者であること
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の支給額
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」は1事業所あたりに支給される金額が決まっています。
共通化した対象労働者(2人目以降)について、または同時に共通化した諸手当(2つ目以降)について助成額が加算されます。
また、支給額は、生産性の向上が認められる場合や企業の規模によって変わるのでご注意ください。
1事業所当たり38万円<48万円>(28万5,000円<36万円>)
1事業所当たり1回のみ支給されます。
共通化した対象労働者(2人目以降) | 加算の対象となる手当は、対象労働者が最も多い手当1つとなります。
対象労働者1人当たり15,000円<18,000円>(12,000円<14,000円>)
<上限20人まで>
|
同時に共通化した諸手当(2つ目以降) | (原則、同時に支給した諸手当について、加算の対象となります。)
諸手当等の数1つ当たり16万円<19万2,000円>(12万円<14万4,000円>)
<上限4手当まで>
|
※< >は生産性の向上が認められる場合の額、( )内は大企業の額です。
生産性の向上について:
「生産性要件」を満たした場合、助成金の支給額が増額されます。
「生産性要件」……助成金の支給申請を行う直近の会計年度における「生産性」が6%以上伸びているまたは、1%以上6%未満伸びていて、金融機関から一定の「事業性評価」を得ていること
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の申請のスケジュール
- (1) キャリアアップ計画の作成・提出(諸手当制度を共通化または健康診断制度を規定する前日までに提出)
- (2) 諸手当制度の共通化の実施または健康診断等を延べ4人以上に実施
- (3) 諸手当制度共通化後または健康診断等を実施後6か月分の賃金を支給・支給申請
- (4) 審査、支給決定
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の申請期間
対象労働者に初回の諸手当の支給後6か月分、または健康診断制度を有期雇用労働者等に延べ4人以上実施した日(延べ4人以上に実施した日がキャリアアップ計画書の認定を受けた日より前の場合は計画書の認定を受けた日)を含む月の分の賃金を支給後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に申請します。
「キャリアアップ助成金 諸手当制度共通化コース」の必要書類
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の申請には、支給申請書(様式第3号、別添様式5)が必要です。
支給申請書は以下よりダウンロードできます。
添付書類一覧:
支給申請書に以下の書類を添付します。
- (1) 支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)
- (2) 支払方法・受取人住所届
- (3) 管轄労働局長の認定を受けたキャリアアップ計画書(写)
- (4) 諸手当制度または健康診断制度が規定されている労働協約または就業規則および諸手当制度または健康診断制度が規定される前の労働協約または就業規則
- (5) 中小企業事業主である場合、中小企業事業主であることを確認できる書類
- (6) 生産性要件に係る支給申請の場合の添付書類
※(6)は、「生産性要件算定シート」(共通要領様式第2号)および算定の根拠となる証拠書類(損益計算書、総勘定元帳、確定申告書Bの青色申告決算書や収支内訳書等)を指します。
また、「諸手当制度を新たに設け、適用する場合」と、「健康診断制度を新たに設け、実施する場合」は上記の6つとは別に添付する書類があります。
詳細は下記の「キャリアアップ助成金のご案内」51ページをご覧ください。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」の記入例
支給申請書の記入例を下記の「キャリアアップ助成金のご案内」から確認できます。
様式第3号……67ページ
別添様式5……72・73ページ
まとめ
正規雇用労働者と有期雇用労働者等の不合理な待遇差をなくす「同一労働同一賃金」が2021年4月から中小企業にも適用されました。
しかし、この時点で対応が完了している中小企業は全体の約3割。
コロナ禍の逆風もあり、対応に苦慮する企業が多いようです。
「キャリアアップ助成金 賃金規定等改定コース」は、正規雇用労働者と有期雇用労働者等の格差を改善するための大きな後押しになる制度です。
本制度を活用し、有期雇用労働者がやりがいを見出しやすい環境づくりを目指してみませんか?
出典:厚生労働省