経済状況等により業績不振に陥り事業規模を縮小せざるを得ない場合があります。
「労働移動支援助成金 再就職支援コース」は、このようなときに離職を余儀なくされる労働者の早期再就職を支援する目的で作られた制度です。
企業は離職する労働者の再就職先を見つけるために有効な支援を行うことで助成を受けられます。
1. 「労働移動支援助成金 再就職支援コース」とは
「労働移動支援助成金 再就職支援コース」は、事業規模の縮小に伴い離職を余儀なくされる方の早期再就職の支援を目的とする制度です。
本助成金は労働者の再就職援助のために措置を講じる事業主に対して助成されます。
対象となる支援は次の(1)~(3)です。
助成金の対象となる支援 | 内容 |
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(1)再就職支援 | 離職する労働者の再就職支援を職業紹介事業者に委託して再就職を実現させた場合の助成。
再就職支援の一部として訓練やグループワークを実施した場合、助成金を上乗せする。
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(2)休暇付与支援 | 離職が決定している労働者に対して求職活動のための休暇を与えた場合の助成。 |
(3)職業訓練実施 | 離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合の助成。 |
2. 支給対象となる労働者
本助成金の支給対象となる労働者(以下「支給対象者」)は、次の(1)~(7)全てを満たしている方です。
- (1)本コースの支給申請を行う事業主(以下「申請事業主」)の作成する「再就職援助計画」または「求職活動支援書」の対象者であること
- (2)申請事業主に雇用保険の一般被保険者または高年齢被保険者として継続して雇用された期間が1年以上の方であること
- (3)申請事業主の事業所へ復帰の見込みがないこと
- (4)それぞれ次のA~Cの時点で再就職先が未定であること、またはこれに準ずる状況にあること
- A.「再就職支援」を実施する場合は、当該委託契約日時点
- B.「休暇付与支援」を実施する場合は、休暇の初日時点
- C.「職業訓練実施支援」を実施する場合は、当該委託契約日時点(委託契約によらない場合は教育訓練施設等への訓練申込日)
- (5)職業紹介事業者によって退職勧奨を受けたと受け止めている方でないこと
- (6)申請事業主によって退職強要を受けたと受け止めている方でないこと
- (7)職業紹介事業者に対する委託により行われる再就職支援を受けている方の場合は、当該職業紹介事業者の行う再就職支援を受けることについて承諾している方であること
3.支援対象となる事業主
本コースを受給するためには、以下(1)~(5)の要件に該当している事業主であることが必要です。
- (1)雇用保険適用事業所の事業主であること
- (2)支給のための審査に協力すること
- (3)申請期間内に申請を行うこと
※申請期間は再就職が実現した日以降、助成対象期限の翌日から2か月以内です。
ただし、対象者が複数名いる場合は、最後の支給対象者の助成対象期限の翌日から2か月以内に提出します。
「助成対象期限」は、支給対象者の離職の日の翌日から起算して6か月(支給対象者が 45 歳以上の場合は9か月)を経過する日です。
- (4)人員削減を行う組織(事業部門、事業所、事業部、企業等のいずれの単位でも構いません)において、次のAまたはBに該当する事業主であること
内容 | |
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A | 生産量(額)、販売量(額)または売上高等の事業活動を示す指標が、対前年比 10%以上減少していること
(※「対前年比10%以上減少」とは、「再就職援助計画」の認定または「求職活動支援基本計画書」が提出された日付を基準として、その直前3か月の平均で見ることを原則とします。直近1年間の平均で見ることや、今後3年以内に対前年10%以上減少の傾向となる見込みであっても差し支えありません)
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B | 直近の決算における経常利益が赤字であること、または今後3年以内に赤字となる見込みがあること |
- (5)中小企業以外の事業主の場合、職業紹介事業者への委託による再就職支援の対象者(再就職援助計画または求職活動支援書の対象者)が30人以上であること
4.助成額
支給対象者1人あたりに以下の金額が支給されます。
ただし、1年度1事業所あたり500人を限度とします。
次の(1)~(3)は、平成30年4月1日以降の再就職援助計画等の対象者です。
(1)再就職の支援を職業紹介事業者に委託する場合
支給対象となる方の再就職を実現させた場合に、以下の金額が支給されます。
中小企業事業主 【45歳以上の対象者】 | 中小企業事業主以外 【45歳以上の対象者】 | |
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通常 | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/2【2/3】 | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/4【1/3】 |
特例区分(※) | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×2/3【4/5】 | (委託費用-訓練実施に係る費用-グループワーク加算の額)×1/3【2/5】
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※次の(ア)(イ)のいずれにも該当する場合、特例区分の対象となります。
- (ア)申請事業主が労働者の再就職支援の実施について委託する職業紹介事業者との委託契約において、次のA~Cのいずれにも該当する契約を締結していること
- A.職業紹介事業者に支払う委託料について、委託開始時の支払額が委託料の2分の1未満であること
- B.職業紹介事業者が支給対象者に対して訓練を実施した場合に、その経費の全部又は一部を負担するものであること
- C.委託に係る労働者の再就職が実現した場合の条件として、当該労働者の雇用形態が期間の定めのないもの(パートタイムを除く)であり、かつ、再就職先の賃金が離職時の賃金の8割以上である場合、委託料について5%以上を多く支払うこと
- (イ)支給対象者の再就職先における雇用形態が、期間の定めのない雇用(パートタイム労働者を除く)であり、かつ、再就職先の賃金が離職時の賃金の8割以上であること
- ※訓練やグループワークの実施を委託した場合は次のとおりです。
- <訓練>訓練実施に係る費用×2/3を加算(上限30万円)
- <グループワーク>3回以上で1万円を加算
(2)求職活動のための休暇を付与する場合
再就職実現時に当該休暇1日当たり5,000円(中小企業事業主については8,000円)を助成(180日分が上限)します。(平成28年4月1日より)
さらに、支給対象者の離職の日の翌日から起算して1か月以内に再就職が実現した場合、支給対象者1人につき10万円を加算します。(平成29年4月1日より)
(3)離職する労働者の再就職のための訓練を教育訓練施設等に委託して実施する場合 (平成28年10月19日より)
再就職実現時に、訓練実施に係る費用の2/3を助成します。(上限30万円)
※平成30年4月1日より前の再就職援助計画等の対象者は、以下の厚生労働省のホームページをご参照ください。
5. 申請のスケジュール
まず、「再就職援助計画」の作成・認定または「求職活動支援基本計画書」の作成・提出を行います。
それ以降のスケジュールは次のとおりです。
申請のスケジュールは支援内容によって異なるので注意してください。
「再就職支援」を実施した場合
- (1)職業紹介事業者の選定
- (2)再就職支援の委託
- (3)対象者の離職
- (4)支給申請
- (5)助成金支給
「休暇付与支援」を実施した場合
- (1)対象者の離職
- (2)対象者の再就職実現
- (3)支給申請
- (4)助成金支給
「職業訓練実施支援」を実施した場合
- (1)教育訓練施設等への委託
- (2)再就職支援
- (3)訓練の実施(※訓練の開始は離職後でも構いません)
- (4)対象者の離職
- (5)対象者の再就職実現
- (6)支給申請
- (7)助成金支給
6.まとめ
今回は「労働移動支援助成金 再就職支援コース」についてご紹介しました。
景気の変動等で事業の縮小をせざるを得ない状況になったとき、事業主にとって労働者の離職は大きな課題です。
労働者の再就職先を見つけるための支援を行うことで助成を受けられる本制度は、労働者と事業主の双方にメリットがあります。
出典:厚生労働省