「勤怠管理、請求業務、販売管理、宿泊業での予約の管理などの定期的な業務が負担となり、どうしても残業している現状……」
「顧客管理ができていない」
「手作業でやっているけど、この作業に時間がとられて他の業務が回らない」
「毎日行っている業務がどうも効率が悪い気がする」
そんな悩みは、様々な業種で抱えていることでしょう。
そんな時に活用できるのが、「IT導入補助金」です。
IT導入補助金は、業務の効率をアップさせるためのITツールの導入をする際に、その経費の一部を補助してもらえる補助金です。
今回は、2021年も公募中のIT導入補助金について解説していきたいと思います。
1. IT導入補助金とは?
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者などが自社の課題やニーズに合ったITツールを導入する経費の一部を補助してもらえる補助金です。
それにより、業務効率化・売上アップを図り、経営力の向上・強化を目指します。
IT導入補助金は、通常枠と低感染リスク型ビジネス枠の2つの枠にわかれています。
低感染リスク型ビジネス枠は、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、ポストコロナに対応できるビジネスモデルへの転換を行うための非対面化ツールを導入する事業者が対象となっており、通常枠よりも補助率が引き上げられます。
- 非対面化ツールとは、事業所以外の遠隔地から業務を行うテレワーク環境の整備をはじめ、人と人との接触の機会を減らす、沿革でのサービス提供が可能なビジネスモデルへ転換、労働生産性の向上を目的としたITツール。
2. 2021年の公募スケジュール
IT導入補助金の2021年交付申請のスケジュールは、以下の予定となっています。
通常枠(A・B類型) | ||||
---|---|---|---|---|
1次締切分 | 2次締切分 | 3次締切分 | 4次締切分 | |
締切日 | 5月14日(金) 17:00 | 7月30日(金) 17:00 | 9月30日(木) 17:00 | 11月中予定 |
交付決定日 | 6月15日(火) | 8月31日(火) | 10月29日(金) 予定 | 12月中予定 |
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型) | ||||
---|---|---|---|---|
1次締切分 | 2次締切分 | 3次締切分 | 4次締切分 | |
締切日 | 5月14日(金) 17:00 | 7月30日(金) 17:00 | 9月30日(木) 17:00 | 11月中予定 |
交付決定日 | 6月15日(火) | 8月31日(火) | 10月29日(金) 予定 | 12月中予定 |
3.活用事例
ITツールの導入といっても、業種によって様々なものがあります。
イメージしやすいよう、以下の事例をご覧ください。
介護施設
訪問介護担当ヘルパーの勤務管理と請求業務効率化のためのツールを導入。
事務作業時間削減に加え、介護サービスの質も向上。
卸売・小売業
日々変動する仕入れ価格、需要をITツールを活用し集計・分析。
後継者問題にも取り組む。売上の多い得意先の需要予測や仕入れ単価の推移、最適な仕入先の選定など、売上に直結するデータを収集が可能となる。
医療
日々変動する仕入れ価格、需要をITツールを活用し集計・分析。
後継者問題にも取り組む。売上の多い得意先の需要予測や仕入れ単価の推移、最適な仕入先の選定など、売上に直結するデータを収集が可能となる。
宿泊業
複数の宿泊予約サイトへ掲載する情報を一元管理できるシステムを導入。
情報更新作業にかかる時間が削減され、顧客対応に注力できる。
建設業
建築3次元CADを導入し、お客様への提案力・訴求力が格段に向上。
受注までのスピードも上がり、売上・粗利が改善。
製造業
PRAツールの導入により、売上管理業務を自動化。
導入後、一日の業務時間を削減。
4. IT導入補助金の4つの類型
IT導入補助金には通常枠、低感染リスク型ビジネス枠の2つの枠にわかれていると説明しましたが、それぞれの枠でさらに2つの類型にわかれています。
申請するITツールによって類型が異なります。
類型ごとに、下記の業務プロセス・汎用プロセスの表の共P-01~汎P-07のいずれかに当てはまるソフトウェアの申請である必要があります。
種別 | P コード | プロセス名 | |
---|---|---|---|
業 務 プ ロ セ ス | 共通プロセス | 共P-01 | 顧客対応・販売支援 |
共P-02 | 決済・債権債務・資金回収管理 | ||
共P-03 | 調達・供給・在庫・物流 | ||
共P-04 | 会計・財務・経営 | ||
共P-05 | 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス | ||
業種特化 プロセス | 各業種 P-06 | 業種固有プロセス | |
汎用プロセス | 汎P-07 | 汎用・自動化・分析ツール (業種・業務が限定されないが、生産性向上への寄与が 認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア) |
- 業務プロセスとは、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上するまたは効率化される工程のこと。
- 汎用プロセスとは、業種・業務に限定されず、業務プロセスと一緒に購入することでさらに労働生産性を向上させるもの。
通常枠(A類型)
通常枠のA類型は、「業務プロセス」の共P-01~各業種P-06のうち、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請するが対象となります。
どちらかというと小規模向けのソフトウェアが対象で、補助額は、30万円~150万円未満となります。
通常枠(B類型)
通常枠のB類型は、「業務プロセス」の共P-01~汎P-07のうち、4種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請するものが対象となります。
4種類以上のプロセスを満たす必要がありますので、比較的大規模なソフトウェアが対象となり、補助額は150万円~450万円以下となっています。
仮にB類型の要件を満たす場合でも、交付申請額が、下限額を下回る場合は、A類型として申請しなければなりません。
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C類型)
IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールのうち、業務の非対面化を前提とし異なるプロセス間での情報共有や連携を行うことで補助事業者の労働生産性の向上に寄与するもので、連携型ソフトウェアとして事務局に登録されたITツールを導入する際に選択する類型です。
必ず共P-01~汎P-07のうち、2種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請する必要があります。
C類型は、補助金額が30万円~300万円未満のC-1と、
補助金額が300万円~450万円以下のC-2にわかれています。
低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:D類型)
D類型は、事前に事務局に登録されたITツールのうち、業務の非対面化およびクラウド対応されていることを前提とし、複数のプロセスにおける遠隔地などでの業務を可能とすることで、補助事業者の労働生産性の向上に寄与するものとして登録させたITツールを導入する際に選択する類型です。
必ず、共P-01~汎P-07のうち、2種類以上のプロセスを保有するソフトウェアを申請する必要があります。
補助金額は30万円~150万円以下となっています。
5.対象者
申請の対象となるのは、中小企業、または小規模事業者となります。
IT導入補助金においての、中小企業・小規模事業者の定義は以下の表のとおりです。
【中小企業の定義】
業種分類 | 定義 |
---|---|
(1)製造業、建設業、運輸業 | 資本金の額又は出資の総額が 3 億円以下の会社又は常時使用する従業員
の数が 300 人以下の会社及び個人事業主
|
(2)卸売業 | 資本金の額又は出資の総額が 1 億円以下の会社又は常時使用する従業員
の数が 100 人以下の会社及び個人事業主
|
(3)サービス業 (ソフトウェア業または情報処理サービス業、旅館業を除く) | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または常時使用する従業員の数が100人以下の会社および個人事業主 |
(4)小売業 | 資本金の額または出資の総額が5千万円以下の会社または常時使用する従業員の数が50人以下の会社および個人事業主 |
(5)ゴム製品製造業 (自動車または航空機用タイヤおよびチューブ製造業ならびに工場用ベルト製造業を除く) | 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が900人以下の会社および個人事業主 |
(6)ソフトウェア業または情報処理サービス業 | 資本金の額または出資の総額が3億円以下の会社または常時使用する従業員の数が300人以下の会社および個人事業主 |
(7)旅館業 | 資本金の額又は出資の総額が 5 千万円以下の会社又は常時使用する従業 員の数 が 200 人以下の会社及び個人事業主 |
(8)その他の業種(上記以外) | 資本金の額又は出資の総額が 3 億円以下の会社又は常時使用する従業員
の数が 300 人以下の会社及び個人事業主
|
(9)医療法人、社会福祉法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
(10)学校法人 | 常時使用する従業員の数が300人以下の者 |
(11)商工会・都道府県商工会連合会および商工会議所 | 常時使用する従業員の数が100人以下の者 |
(12)中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 | 上記(1)~(8)の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
(13)特例の法律によって設立された組合またはその連合会 | 上記(1)~(8)の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
(14)財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) | 上記(1)~(8)の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
(15)特定非営利活動法人 | 上記(1)~(8)の業種分類に基づき、その主たる業種に記載の従業員規模以下の者 |
【個人事業主の定義】
業種分類 | 定義 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数が 5 人以下の会社及び個人事業主
|
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数が 20 人以下の会社及び個人事業主 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数が 20 人以下の会社及び個人事業主 |
6. 補助対象経費
IT導入補助金には、ITツールの提供をしてくれるIT導入支援事業者がいます。
補助対象経費は、そのIT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用が対象となります。
登録されたIT導入支援事業者への相談を行い、自社の生産性向上に役立てるITツールを選択し、申請を行います。
補助対象経費の内容は、
ソフトウェア費、導入関連費、低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)は左記に加えハードウェアレンタル費などが対象となります。
今後、IT導入補助金公式サイトにて補助金の対象となるITツールが公開される予定です。
詳しくは公式サイトをご覧ください。
7. 補助額・補助率
最後に、気になる補助額・補助率は以下のとおりとなっています。
A類型 | B類型 | C類型 | D類型 | |
---|---|---|---|---|
補助率 | 1/2以内 | 2/3以内 | ||
上限額・下限額 | 30万~150万円未満 | 150万〜450万円以下 | 30万〜450万円以下 | 30万〜150万円以下 |
8.まとめ
今回は、IT導入補助金についてご説明しました。
ITツールの導入を検討している方は、
IT導入補助金を上手に活用し、さらなる業務改善を目指してみてはいかがでしょうか。